『写真のピントについて考える』第二回は「被写界深度」について考えます。

 前回のピントをあわせる意味についての講座では、「ピントを合わせたところは主題として強調しやすい」と学びました。では、ピントが合ってるところと合ってないところの境目はどうなるの?というのが今回の講座です。
 写真全体にピントを合わせるパンフォーカスやピント範囲外をボカす方法なども合わせて学びます。

ピントの位置について

 カメラで写真を撮る時、ピントをあわせるという行為を行います。
 ピントあわせが完了した時、理論的にいうとピントが合っている距離は一定で、その前後はもうピントは合っていないということになります。

 が、しかし、実際はそんなふうには見えませんよね・・・

ピントが合っているように見える範囲が被写界深度

 実際には線を引いたようにピントの境界があるのではなく、ピントが合ってシャープなところからなだらかにピントが外れていきます。

 このある程度ピントが合っているような範囲を「被写界深度」と言います。

 先の講座では「ピントを合わせることによって主題を強調する」と学びましたので、「主題の見せ方を変えるために、ピントの合っている範囲を調整したい」と考えつくかも知れません。

 そうです。被写界深度はある程度コントロールできます。

被写界深度を表現する言葉

 被写界深度の話の前に、被写界深度がどのくらいあるかを表現する言葉について記載します。
 例えば、重さは軽い・重い、長さは短い・長いと表現しますよね。
 同じように、被写界深度は「ピントが合っている距離が狭いこと」を「被写界深度が浅い」、その逆を「被写界深度が深い」と表現します。以下、この表現で書きますので記憶しておいてください。

被写界深度のコントロール方法

 被写界深度をコントロールする方法は3つです。

  • 被写体との距離
  • レンズの焦点距離
  • 絞り

 この3つにより被写界深度は決まります。
 ひとつずつ説明します。

被写体との距離による被写界深度

 カメラと被写体との距離により被写界深度は決まります。

  • 近くにピントを合わせる = 被写界深度が浅くなる
  • 遠くにピントを合わせる = 被写界深度が深くなる

となります。

 例えば1m先のものにピントを合わせた時にピントの合っている範囲が0.2m、10m先のものにあわせたときピントの合っている範囲が1mというようになります。

レンズの焦点距離による被写界深度

 カメラのズーム機能を使うと広い範囲を写したり、遠くのものを大きく写したりできます。これはレンズの焦点距離を変化させているのです。
 焦点距離が短い(数字が小さい)と広い範囲が写り、焦点距離が長い(数字が大きい)と狭い範囲が写ります。(狭い範囲を写す=遠くのものが大きくなる)

 焦点距離に関する被写界深度は、

  • 長い焦点距離で撮る = 被写界深度が浅くなる
  • 短い焦点距離で撮る = 被写界深度が深くなる

となります。

絞りによる被写界深度の調整

 上記の「被写体との距離」や「焦点距離」による被写界深度の調整を行うと構図が変わってしまいます。そこで最もよく使われる被写界深度の調整方法は、「絞り値を変える」方法です。

 絞りとはレンズの中にある光の量を調整する機構です。カーテンを開ける量で部屋の明るさを調整するのと同じです。

 絞りでの被写界深度の調整はニコンの説明がとてもわかりやすいので、こちらをご覧ください。

 こちらではシンプルなまとめのみ掲載します。

  • 絞りを開ける(f値を小さく) = 被写界深度が浅くなる
  • 絞りを閉じる(f値を大きく) = 被写界深度が深くなる

 

写真における被写界深度の意味

 ピントはただ1点にあうのでなく、被写界深度内のある程度広いの範囲であうことを学びました。

 被写界深度を、一枚の写真という点で考えると、

被写界深度を深くする = 主題の範囲を広く見せる
被写界深度を浅くする = 主題を周辺から浮き立たせる

というように利用できます。

 その極端な利用方法が、風景写真等で使われる「パンフォーカス」、ポートレート等で使われる「ボカす写真」です。

パンフォーカスとボケ

パンフォーカス

 パンフォーカスとは、とても深い被写界深度で撮影し、全体でピントが合っているように見える写真のことです。
 「全体がよくわかるようにパンフォーカスで撮影する」といった感じで使います。

 写真としては次のようなものです。手前から奥までピントが合っているように見えます。

パンフォーカス写真の見本
パンフォーカスのサンプル

 パンフォーカスで撮影するには、「絞りを絞って(閉じて)」撮影します。
 また小さなセンサーのカメラ(スマホなど)の場合は、焦点距離がとても短いレンズなので、遠くを撮影すると自然にパンフォーカスになります。

 とても距離が近い花や昆虫などを撮影する場合、「近くでは被写界深度が浅くなる」理由で、パンフォーカスで撮影することが難しいです。深度合成機能があるカメラを使用する、ピントをずらして撮影して合成するなど、他の方法が必要です。

ボケ

 ボケを出すように撮影した写真のサンプルです。

ボケのサンプル
ボケのサンプル

 この写真、実はパンフォーカスの写真と同じ設定で撮影しています。
 向きが違いますが場所も同じです。
 決定的に違うことは、ピントを合わせた距離です。パンフォーカスの写真は少し離れたところに、この写真ではすぐ前(数十cm)のところにピントがあります。
 ピントの距離が近いと被写界深度が浅い=背景がボケる、ということがよくわかると思います。

被写界深度の考察のまとめ

  • 被写界深度とは、ピントが合っているように見える範囲
  • 被写界深度が深い写真(パンフォーカス)を撮影するには
    • 焦点距離の短いレンズを使う(広角、ワイド)
    • 絞りを絞る
    • 被写体から離れる
  • 被写界深度が浅い写真を撮影するには(ボケを出すには)
    • 焦点距離の長いレンズを使う(望遠、テレ)
    • 小さな絞りの値で撮影する(明るいレンズを使う)
    • 被写体に近づく

 どこまでピントをあわせるのかを考えながら撮影するのも楽しいです。